アール ドイツのワイン産地1

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位置

 ドイツ全体で見ると西側、ワインの主要産地が集まっている地域の中では北西に位置します。
ライン川の下流に接続する支流、アール川の中・下流域に広がるアンバウゲビート(Anbaugebiete)で、南にモーゼル(Mosel)、東にミッテルライン(Mittelrhein)があります。

テロワール

 南西から北東へ向かって流れるアール川は、南のモーゼル川のように蛇行しているため、南向きの斜面が多く存在します。
北緯50度という高緯度地帯にある産地ですが、アイフェル丘陵が作る切り立った谷間と東のミッテルラインにあるノイヴィード盆地から流れ込む温かい空気、そして日照時間の長さなどがブドウの育成に適したテロワールを生み出してくれます。
中流域はスレート(粘板岩)、下流域は堆積土壌がメインで、火山岩も多く見られます。
年間降水量は600ミリ程度。
春先には霜害に注意が必要ですが、それ以外ではブドウの育成に適した温暖な気候となっています。

ワイン造り

 モーゼルを縮小したような、コンパクトな地域です。
栽培面積は563ヘクタール(5.63平方キロメートル)、ワイン生産量は約0.4万キロリットル程度。
ベライヒ(Bereich)、グロースラーゲ(Groslage)ともにひとつだけで、アインツェルラーゲ(Einzellage)も43しかありません。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはシュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)。
そのほか、ポルトギーザー(Portugieser)、フリュブルグンダー(Frühburgunder)なども栽培されています。
ドイツでは珍しいことに赤ワインの割合が非常に大きく、赤ワイン:白ワインの比率は、約85:15となっています。
なかでも、主要品種のシュペートブルグンダーが偏って多く栽培されており、全栽培面積の60%以上を占めています。
全体に軽めのフルーティなタイプになっており、生産量の少なさはもちろん、周辺が著名な観光地であることから、現地でほとんどが消費されてしまいあまり国外へは出回りません。

ベライヒ(Bereich)

ヴァルポルツハイム/アールタール(Walporzheim/Ahrtal)

 アールの唯一のベライヒです。
当然、アール全域をカバーしており、同じく唯一となるグロースラーゲの「マリエンタール(Marienthal)」もここに属しています。
規模とは裏腹に非常に古くからある歴史的なブドウ栽培地で、その始まりは2世紀ころ、ローマ帝国時代にまで遡ります。
大規模な企業ではなく農民が細々と営む畑がほとんどだったため、歴史的に協同組合が発達してきた地区で、1868年に設立されたドイツどころか世界最古のワイン組合が残っています。
優良な生産地なのですが著名な観光地でもあり、生産量の少なさもあってこの地域で生産されたワインはほとんどが現地で飲まれてしまうため、確実に味わいたいなら訪れてみるのが一番だとされています。
観光用に整備されたコース「ロートウェンヴァンダヴィック(Rotwein-Wanderweg=赤ワインのハイキングロード)」もあり、風光明媚なワイン畑を眺めながら歩いたり、レストランで食事とワインを楽しむことができるようになっています。