アルコールによる問題 ワインの飲みすぎが引き起こす健康への副作用
ワインは言うまでもなくアルコール飲料です。
酵母菌の働きによって獲得するすばらしい香味や、アルコールでなければ得られない飲み心地など良い面も多いのですが、ワインの害となる側面のほとんどがこのアルコールによるものであるとも言えます。
ここでは、アルコールを含んでいるがゆえの、飲みすぎによる問題を確認してみましょう。
ワインの持つ発がん性リスク
ワインがもつ発がん性のリスクの中で、最も顕著だとされているのが「アセトアルデヒド」による肝臓がんなどのリスクです。
アルコールの人体内での分解は、アルコールからアセトアルデヒドに、アセトアルデヒドから酢酸と水に、という2段階の行程で行われています。
この分解途中で発生するアセトアルデヒドは毒性のある物質で、二日酔いや悪酔いの原因としても知られていますが、同時に発がん性のある物質でもあるのです。
分解のスピードはアセトアルデヒド脱水素酵素の量や分解能力によっても大きく左右され、この酵素の働きが弱かったり少なかったりすると、飲酒時の発がんリスクが高まります。
このリスクは、一度の飲酒量が多いほど、また習慣的に飲むほど高まるとされています。
一緒に食べる食事やおつまみの質も重要です。
一般的には、飲酒しながらの食事はアルコール抜きの食事よりも炭水化物が少なく、たんぱく質や脂質の多い、味の濃いものになりがちです。
特に動物性の油脂を多く含む食事は、消化のための胆汁の分泌を増加させるため、胆管がんや大腸がんのリスクを高めてしまいます。
また、おつまみは塩分も多くなりがちですが、これも胃や腸の状態を悪化させ、消化器系のがんを誘発するとされています。
その他の生活習慣病リスク
アルコールによる病気リスクは、がんだけにとどまりません。
アルコールの分解を主に行う肝臓は、多量のアルコールを連続で消費し続けるとだんだんと機能が低下していってしまいます。
その結果、中性脂肪が溜まったフォアグラのような「脂肪肝」、それがさらにひどくなって起こる「肝炎」や「肝硬変」などが引き起こされ、アルコールや脂肪などの分解不良、慢性的な発熱や嘔吐などの症状が起るようになります。
こうなってしまうと、もう満足に飲酒を続けることは困難になります。
循環器系の問題も深刻です。
アルコールは短期的に見ると血圧を下げますが、摂取が連続するようになると逆に高血圧の原因となります。
これは血管の収縮作用を高めたり腎臓からミネラルが失われること、またおつまみによる塩分の過剰摂取などが関係しているといわれています。
さらに飲酒は体内から水分を奪いますので、血管や心臓などに対する付加が増大することになります。
突然の重大な疾患に繋がりかねない「高脂血症」も、アルコールが原因の一つとなりえます。
一日に摂取するアルコール量が増大すると肝臓での脂肪の分解が進まなくなり、アルコールから発生するエンプティカロリー(消費されやすいカロリー)を消費しきれない場合は、逆に肝臓で脂肪酸が作られるようになり、血液中に放出されます。
これらは脂肪肝の原因となるほか、血管の閉塞・破裂などの問題を引き起こし、それが心臓や脳などで起これば「脳卒中」「心筋梗塞」など、命に関わる病気へと発展するのです。
アルコール飲料は「飲みすぎてしまう」飲み物
アルコール飲料の害は、一部を除けば過剰摂取によるものといえます。
適度な量や体に大きな負担をかけない間隔での飲酒は大きな問題を引き起こさないどころか、様々な恩恵を与えてさえくれます。
しかし、一般的にアルコールの入っている飲み物は、ノンアルコール飲料に比べてつい飲みすぎてしまう特徴があります。
例えば、ガス入りの水や炭酸ジュースなどをジョッキで何杯も、立て続けに飲める人はほとんどいないはずです。
しかし、これがビールになると、むしろジョッキ一杯をゆっくり飲む、という人は少ないのではないでしょうか。
アルコールが含まれている水分は体内への吸収が早く、かつ口内や喉へ心地よい刺激を与えてくれるため、短いスパンで飲み続けることができるのです。
また、「酔い」をもたらしてくれる神経を麻痺させる作用には、中毒性があります。
人によって症状の出方は大きく異なりますが、一度に多くのアルコールを摂取する人ほど、体内からアルコールが抜けるとすぐに、もう一度飲みたくなってしまうのです。
アルコール中毒は肉体的な問題だけでなく、精神的、社会的な問題にも発展し、その人の人生そのものも破壊してしまう可能性を持っています。
アルコールとの付き合い方
こうして害になる部分だけを並べていくと、ワインを含むアルコール飲料全般が大変恐ろしいもののように感じてしまうかもしれません。
しかし、飲みすぎたり適切なタイミングを守れないことが問題なのであって、アルコール自体が悪い、というわけではありません。
適量のアルコールには、血圧を下げ、食欲を増進し、体温を上げることで免疫力を増大させる効果があります。
また、過度な緊張を緩め、万病の元となるストレスを軽減する作用もあります。
ストレスは消化液の異常分泌や免疫の低下を促すため、それを軽減するお酒には様々な病気に対する抑制作用があるのです。
言うまでもなくストレス過多な現代社会を生きるうえで、これは大きな助けとなるのではないでしょうか。
そもそも理性を抑制する効果を持っているアルコール飲料を、節度を持って楽しむというのが難しいのは当然ではあります。
ただアルコール摂取における害、特に深刻な害は過剰な飲酒を「繰り返す」ことで発生しますから、適量をできるだけ心がける、くらいのつもりを持っているだけでもかなり違うでしょう。
そして、ビールのようにごくごく飲むものではなく、蒸留酒のように高濃度のアルコールを含んでいるわけでもないワインは、そんな抑制の効いたお酒の楽しみ方にぴったりなお酒であるとも言えます。
おいしいワインはついもう一杯と手を伸ばしたくなるものですが、今だけでなくこれからもずっとワインを楽しみ続けていくためにも、欲しい気持ちをぐっと抑えて適量でやめる習慣をつけるようにしましょう。