ブルゴーニュのワイン造り 特徴、製法など

目次

「クリマ」と「クロ」

 ブルゴーニュのワイン造りの最大の特徴は、何と言っても極限まで細分化された畑の区画、「クリマ(Climats)」ごとのワイン造りでしょう。
キリスト教を信仰しつつも権力者として贅沢をすることを嫌った修道士一派が創設したというシトー派。
彼らにとって、ワインとは単なる嗜好品ではなく、神が作り出した大地や気候などの自然を写すもの、つまり「神の御業」そのものでした。
そして、そのワインを捧げ物とするのであれば、人の手を極力入れずに純粋に、ただし最も良質であるようにしなければならないと考えたのです。
そのために彼らが取った手法が、「最もブドウ栽培に適した土地を探し出し、最も適した品種のブドウを育てる」というものでした。
彼らが行った地質調査は、「実際に土をなめて確かめた」と言い伝えられるほど徹底したもので、何世紀、何世代にもわたって行われたその調査によって、ブルゴーニュのブドウ畑はその品質ごとにクリマと呼ばれる単位に分けられたのです。
そして、この調査があまりに正確で有効なものであったため、1000年近い時が経過した現代でもクリマがブルゴーニュのブドウ栽培、そしてワイン造りの基本となっています。
また、調査の中で特に優れた土地が見つかると、彼らはそこを区別できるように塀や石垣で囲いました。
「クロ(clos)」と呼ばれるこの区画は、そのほとんどが特級の畑として認定されています。
こうして、品質ごとに分類された土地で、植えられた場所のテロワールを詳細に写し取るピノ・ノワールやシャルドネといった品種のブドウを育てるという、ブルゴーニュワインの基礎が生まれたのです。

畑ごとの格付け

 ブルゴーニュでは、ワインの品質を決定付けるのは生産者ではなく畑であると考えられています。
そのため、格付けも当然のように生産者ではなく畑のほうに与えられています。
(ボジョレー地区とマコネ地区は格付けなし)
格付けされた畑は、最も優良なものを「特級畑(グラン・クリュ/Grand Cru)」、次いで良質なものを「一級畑(プルミエ・クリュ/Premier Cru)」と呼びます。
これは中世の地質調査によって分けられたクリマ単位で定められているため、例によって行政区画や所有者の範囲とは異なることも多く、ひとつのグラン・クリュが2つや3つの村にまたがって存在していたり、ひとつの畑を複数の所有者で分け合っていたり、ひとつのドメーヌが複数の畑(しかもそれぞれの一部ずつ)を所有していたりします。
こうした事情が、本来はシンプルなはずのブルゴーニュのワインを複雑でわかりにくいものにしてしまっているといえるかもしれません。

生産者ではなく畑主体のワイン造り

 このように、ブルゴーニュでは土地や畑の単位を主体としたワイン造りが行われているので、ラベルに表示される銘柄も地名の方がメインになります。
他の産地ではブドウの品種名や生産者名がもっとも大きく表示されますが、ブルゴーニュのワインはブドウを育てた村や畑の名前のほうが良く知られており、グラン・クリュやプルミエ・クリュはもちろん、村単位でも優良なものにはAOCも定められているため、ラベルにはそちらが優先して表示されるのです。
例えば、ボルドーの格付けシャトーが造ったワインには基本的にそのシャトーの名が与えられます。
(セカンドワインなどの例外はあります)
シャトーが所有する畑の区画やシャトーそのものの所有者が変更になってもワインはまったく同じ名前で造られるため、あるヴィンテージを境にして質が大きく変わっているなんてことも珍しくありません。
これに対して、ブルゴーニュの例えばグラン・クリュの場合、生産者が誰であろうとできあがったワインは全てその畑の名前になります。
もしその畑を20人で分割所有しているなら、まったく同じ名前で全然違う内容の20種類のワインが生まれることになります。
また、逆にひとりの生産者が複数の畑を所有していた場合は、同じ生産者のものでもそれぞれ違う(ブドウを栽培していた畑の)名前を冠したワインになるのです。
いかにテロワールが重要なブルゴーニュのワインであっても、誰が、どんな思想と技術で醸造したかは仕上がりを左右する大きなポイントですので、ブルゴーニュの有名ワインを選ぶ際には銘柄だけでなく生産者もよく確認する必要があります。
ちなみに、グラン・クリュの畑から造られたワインは、その畑の名前のみが銘柄となり、プルミエ・クリュの畑から造られたワインは「村名+畑名」、もしくは「村名+Premier Cru」という表示になります。
(ただし、村名+畑名の表示であっても、等級のついていない畑である可能性があるので、注意が必要です)