ドイツの主要なブドウ品種 白ワイン用ブドウその3
リースリング(Riesling)
ドイツ原産の白ワイン用ブドウで、現在ドイツで一番重要な白ブドウ品種です。
耐寒性があり遅熟で、基本的にははっきりとした酸味を持ちますが、完熟まで待って収穫すると上品でくっきりとした深い甘みも併せ持つようになります。
シャルドネのように、造られた環境によって風味を大きく変えるという特徴があり、冷涼な気候ではリンゴや柑橘類のすっきりした酸味と香り、暖かい気候では桃やパイナップル、スパイスの風味を持ちます。
ただし、温暖な環境では基本的に輪郭がぼやけたような風味になることが多いため、評価の高さの割には栽培地が広がらない品種でもあります。
ドイツの伝統的な評価基準が果汁に含まれる糖分によるものだったため、近年まで基本的にやや甘口~甘口ワイン用のブドウとして知られてきましたが、実際には収穫時期を早めることで辛口も十分対応可能であり、近年のブームに乗って辛口ワインに使用されることが多くなりつつあります。
ただ、現在のところはまだ甘口よりに仕上げられたワインのほうが評価が高くなる傾向にあるようです。
貴腐ワインの原料としても使用されており、最高級のトロッケン・ベーレン・アウスレーゼであれば、強い酸味と糖分によって100年以上熟成を重ねるものもあります。
世界の6割がドイツで栽培されている品種ではありますが、フランス、オーストリア、アメリカ、ニュージーランドなどでも栽培されており、フランスのアルザス地方やオーストリアのヴァッハウ地方、オーストラリアのクレア・ヴァレーなどが優良産地として有名です。
ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)
1882年に、スイス人植物学者、ヘルマン・ミュラー博士によってドイツのガイゼンハイム研究所で人工的に開発された白ワイン用ブドウ品種です。
人工的に交配されたので当初からリースニングとシルヴァーナーが親品種として確定している、と思われてきたのですが、近年の研究で実はリースニングとシャスラ・ド・クルティリエール(マドレイヌ・ロワイエ)との交配であるらしいことがわかりました。(グートエーデル、またはリースニングとする説もあり)
つまり、博士が受粉させたのとは別の花粉が紛れ込み、しかもそれが優等な性質を示して分離・繁殖されたという偶然の重なりによって生まれた品種なのです。
かつては別名としてリヴァーナー、もしくはリースリング・シルヴァーナーとも呼ばれていましたが、親が違うと判明したため現在は使用を禁止されています。
マスカット・オブ・アレキサンドリアに良く似た独特の香りを持ち、すっきりしたさわやかな酸味を特徴とします。
冷涼な気候を好むため温暖な地域には向かず、カビ系の病害に対する抵抗が弱めという問題はありますが、早熟でテロワールによる味の変化もほとんどなく、比較的どんな土地でも栽培しやすい品種です。
甘口ワインに適した原料とされており、かつてドイツでは最も栽培量の多いブドウでしたが、近年の辛口ワインが好まれる傾向やリースニングの台頭によって、作付け面積は急激な減少傾向にあります。
それでも、栽培の容易さから気軽に飲める早飲みワイン用としての需要は多く、新酒ワインとしても親しまれています。
日本でも栽培されており、特に北海道で造られている中には高品質なものもあり、国産ワインの一端として今後が期待される品種といえるでしょう。
ケルナー(Kerner)
1929年にドイツの研究所で人工的に開発された、白ワイン用ブドウ品種です。
黒ブドウのトロリンガーと白ブドウのリースニングを親に持ち、1970年代から90年代にかけてドイツで最も栽培されていた白ブドウ品種でした。
現在はリースニングやミュラー・トゥルガウに抜かれましたが、近年はまた増加傾向にあるようです。
酸味が際立っており、マスカット・オブ・アレキサンドリアに似た香りを持っています。
長期間の熟成に向いており、親であるリースニングよりもコクのあるタイプのワインになります。
耐寒性、耐候性に優れており、保湿性の高い土壌でも育つため、リースニングよりも多様な地域で栽培されています。
ヴァイスブルグンダー(Weißburgunder)
ドイツにおける「ピノ・ブラン」の呼び名。
「ヴァイス」は「白い」、「ブルグンダー」は「ブルゴーニュの」という意味。
現在はドイツにおける白ワイン用ブドウの作付け面積第五位で、近年は辛口ワインの流行に乗ってやや増加傾向にあります。