フランケン ドイツのワイン産地8

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位置

 ドイツ南西部のワイン産地が固まっている地域のうち、北東に位置するアンバウゲビート(Anbaugebiete)です。
旧西ドイツで一番東側の産地でもあります。
東西にジグザグと蛇行しながら流れるマイン川とその支流の流域にブドウ畑が分散しています。
西でヘシッシェ・ベルクシュトラーセ(Hessische Bergstraße)、南西でバーデン(Baden)とヴュルテンベルク(Württemberg)に近接しています。

テロワール

 ライン川流域の産地と異なり、厳しい寒暖差のある大陸性気候帯に属します。
年間降水量は500~600ミリと少なく、日照時間も短いほうではないのですが、初秋から霜の心配をせねばならないような気温の関係でブドウの熟成を待てる期間が短いため、川面からの照り返しや放射熱を利用する必要があります。
土壌は白亜紀や三畳紀のムッシェルカルク(貝殻石灰岩)が中心で、他に砂礫層やコイパー(泥土岩)などが多く、全体的にミネラル感のある白ブドウの栽培に適しています。

ワイン造り

 ブドウ栽培にはやや厳しい気候帯ですが、生産地は小さくはありません。
ブドウの栽培面積は6104ヘクタール(約61平方キロメートル)、ワイン生産量は約4.6万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)は3つで、グロースラーゲ(Groslage)は23、アインツェルラーゲ(Einzellage)は216となっています。
主なブドウ品種は、白ブドウはミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、黒ブドウはシュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)。
そのほか、シルヴァーナー(Silvaner)、バッフス(Bacchus)、リースリング(Riesling)、ドミナ(Domina)なども栽培されています。
栽培面積的にはミュラー・トゥルガウが全体の1/4以上を占めていますが、フランケンを特徴付ける伝統的なブドウ品種としてはシルヴァーナーが挙げられます。
テロワール的に白ワインの生産に適した地域なので、赤ワイン:白ワインの比率もそれを反映して約19:81となっています。
華やかさはないものの、しっかりとした力強い味わいからドイツでは唯一「男性的」と評価されることの多い産地です。
西側の産地と異なり、ローマ帝国ではなくその後の修道士の努力によってワイン造りが伝わった地域なので、修道院や教会、そしてその所有の畑が多くなっています。
かつて粗悪なワインがフランケンの名をかたって流通した際に、区別できるように採用したボックスボイテルという独特の形のボトルが有名ですが、近年ではその本来の意味合いも薄れ、一般的な形のボトルを使用する生産者も増えてきているようです。

ベライヒ(Bereich)

マインフィアエック(Mainviereck)

 西、中、東と三つに分かれるフランケンのベライヒのうち、西側の地区です。
雑色砂岩やムッシェルカルク(貝殻石灰岩)、コイパー(泥土岩)などの土壌があり、たっぷりとしたミネラル感と独特の味わいを持つワインを生産しています。
また、フランケンの少ない赤ワインの多くが、このベライヒの雑色砂岩土壌の畑で造られています。

マインドライエック(Maindreieck)

 西、中、東と三つに分かれるフランケンのベライヒのうち、中央の地区です。
ムッシェルカルク(貝殻石灰岩)がメインの土壌で、フランケンの特徴であるミネラル感の強いワインが生産されています。
特に、中心的な都市であるヴュルツブルク(Würzburg)にはシュタイン(Stein=石)という名を付けられた畑があり、高品質なワインを生み出すことで良く知られていたことやこの地域のワインの特徴を良く表していたことから、かつてはフランケン全体の白ワインが「シュタインワイン」と呼ばれることもあったと言われています。
ゲーテが「この地のワインが切れると不機嫌になる」といって妻に送ってくれるよう催促したほど気に入っていた産地としても知られています。

シュタイガーヴァルド(Steigerwald)

 西、中、東と三つに分かれるフランケンのベライヒのうち、東側の地区です。
コイパー(泥土岩)が地質のメインで、鉄分の多い赤い地層も見られます。
辛口の白ワインの産地として知られています。