トゥーレーヌ地区 ロワール地方のワイン産地3

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トゥーレーヌ(Touraine)地区

 トゥーレーヌ地区は、ロワール地方のほぼ中央、トゥール市を中心とするロワール川中流域にあり、アンジュー&ソーミュール(Anjou&Saumur)地区の東、サントル&ニヴェルネ(Centre&Nivernais)地区の西に位置します。
非常に多くの有名な古城を持ち、「城とワイン産地が同数ある」と表現されることも。
フランス北部にありながら温暖な気候を持ち、ルネサンス期に豪奢な城が多く建造されたことから庭園文化も発達しています。
ブドウ栽培はもちろん他の作物の栽培も盛んで、美食と美しい庭園に彩られる「フランスの庭」の異名も持っています。

トゥーレーヌ地区の歴史

 パリに程近いこの地区は、以西のロワールの地域とは異なり混乱期もフランス王家の影響の強い地域でした。
1044年から1204年までは、後のイングランド王家でもあるアンジュー家(プランタジネット朝)が支配者として統治していましたが、カペー朝フランスの7代国王であるフィリップ2世が1205年に奪い返した後は、フランス王室の公領となります。
1249年にジャンヌ・ダルクがシャルル7世に謁見したシノン城があるのもこの地区です。
17世紀にルイ14世が積極的な対外戦争で周辺地域の併合を進めるまでは、現在ワイン産地として名を馳せる土地の幾つかが王室の権力の及ばない土地であったことから、中世のフランス王室においてはトゥーレーヌ地区のワインがもてはやされ、一時期はボルドー以上の評価を得ていた時期もありました。
そのため、中世には多くの城が立てられルネサンス期にはさらにきらびやかな改装が施された、貴族や王族に愛された土地であった一方で、国内向けのワイン産業が発展し有力なワイン畑も多数作られたのです。
現在は古城と庭園、そして美食を楽しめる「フランスの庭」として主要な観光地となっていますが、今でも多様な品種から造られるバラエティ豊かなAOCが認められたワインの産地としての側面も持ち続けています。

トゥーレーヌ地区のワイン

 この地区のワインは非常に多様で、スティルワイン、スパークリングワイン、甘口、辛口などの別はもちろん、それぞれの使用品種も多岐に渡っています。
赤ワインはカベルネ・フランやガメイ、白ワインはシュナン・ブランやソーヴィニヨン・ブランが主体で、早飲み系の軽い口当たりのものが多くなっているようです。
特に有名なものとしては、ジャンヌ・ダルクがシャルル7世に謁見したことで知られるシノン城周辺の「シノン(Chainon)」や、トゥーレーヌ地区のワイン栽培のレベルを引き上げたと言われているサン・ピエール修道院領地だった「ブルグイユ(Bourgueil)」の赤ワインがあげられます。
シノンにはAOC認定をされているわけではないものの特に優良であるとされる畑があり、固有名がラベルに記載されます。
また、「ヴーヴレイ(Vouvray)」「モンルイ・シュル・ロワール(Montlouis-sur-Loire)」のスパークリングワインも良く知られています。
いずれも白のみですが、ガス圧の異なる「ムスー」と「ペティヤン」の二種類を造っており、AOCもそれぞれ認定されています。